藤井風(Fujii Kaze)『帰ろう』の歌詞とその意味&魅力について解説していきます。
1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』のラストを飾る楽曲です。
この曲は隠れた名曲であり、ファンの中では言わずと知れた名曲。
優しい曲調でありながら、スケールの壮大な楽曲になっています。
風くん本人の公式Instagramの投稿から。
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後半ではこの楽曲の意味などについて詳しく書いているので、是非最後まで目を通してみてください!
それでは早速『帰ろう』の歌詞紹介から書いていきます。
あくまで筆者自身が解釈したものになるので、一つの参考として受け取っていただけると幸いです。
動画解説:『帰ろう』歌詞考察してみた
このブログの内容は下記の動画でも解説中!
藤井風『帰ろう』歌詞
歌手:藤井風(Fujii Kaze)
作詞:藤井風(Fujii Kaze)
作曲:藤井風(Fujii Kaze)
収録:1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』
発売日:2020年5月20日(水)
あなたは夕日に溶けて
私は夜明けに消えて
もう二度と 交わらないのなら
それが運命だね
あなたは灯ともして
わたしは光もとめて
怖くはない 失うものなどない
最初から何も持ってない
それじゃ それじゃ またね
少年の瞳は汚れ
5時の鐘は鳴り響けど もう聞こえない
それじゃ それじゃ まるで
全部 終わったみたいだね
大間違い 先は長い 忘れないから
ああ 全て忘れて帰ろう
ああ 全て流して帰ろう
あの傷は疼けど この渇き癒えねど
もうどうでもいいの 吹き飛ばそう
さわやかな風と帰ろう
やさしく降る雨と帰ろう
憎みあいの果てに何が生まれるの
わたし、わたしが先に 忘れよう
あなたは弱音を吐いて
わたしは未練こぼして
最後くらい 神様でいさせて
だって これじゃ人間だ
わたしのいない世界を
上から眺めていても
何一つ 変わらず回るから
少し背中が軽くなった
それじゃ それじゃ またね
国道沿い前で別れ
続く町の喧騒 後目に一人行く
ください ください ばっかで
何も あげられなかったね
生きてきた 意味なんか 分からないまま
ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう
与えられるものこそ 与えられたもの
ありがとう、って胸をはろう
待ってるからさ、もう帰ろう
幸せ絶えぬ場所、帰ろう
去り際の時に 何が持っていけるの
一つ一つ 荷物 手放そう
憎み合いの果てに何が生まれるの
私、私が先に 忘れよう
あぁ今日からどう生きてこう
『帰ろう』歌詞の意味&魅力
この曲『帰ろう』は、『死』をテーマにして制作された一曲。
これまで生きてきた中で、苦しかったことや悲しかったことなど様々な負の感情があったはずだけれども、死ぬときは全部置いて綺麗にしてあの世へ行きたい。
風くん本人の死生観が大胆に描かれたバラード曲であり、聞けば聞くほど心の奥底に深く突き刺さるような一曲です。
この曲を具現化するまで死ぬことはできぬとまで思っていたそうで、それほどまでに風くんにとっても思い入れのある作品になっているとのこと。
幸せに死ぬためには今をどう生きればよいのだろうか?という問いを通して、自らの生き方を見つめ直すきっかけをくれるような楽曲となっています。
公式MVの紹介
こちらがYouTubeに投稿された『帰ろう』公式MV。
YouTube上では様々なアーティストがこの曲のカバーを投稿しているので、是非合わせてチェックしてみて下さい!
ここからは歌詞解説をしていきます。
1番:歌詞の意味
まずは冒頭Aメロ部分の歌詞。
あなたは夕日に溶けて
私は夜明けに消えて
もう二度と 交わらないのなら
それが運命だね
あなたは灯ともして
わたしは光もとめて
怖くはない 失うものなどない
最初から何も持ってない
このパートでは、生の世界(今生きている人)と死後の世界(この曲の主人公)に存在する人間の対比が描かれているのではないでしょうか。
“夕日に溶ける”と”灯ともして”という部分は明るい世界、つまり生の世界を。“夜明けに消えて”と”光もとめて”という部分は暗い世界、つまり死後の世界を。それぞれがそういったものを表現しているような気がします。
そしてそれら2つの世界が交わることは決してありません。
誰しもがいつかは身を持って経験することになる普遍の事実であり、それは運命として受け入れようと言っているのです。
そしてそれは(死ぬことは)、決して怖いことではないのだと伝えています。
多くの人は死ぬことによって、これまで手に入れてきた友や富や愛情、その全てを失ってしまうことに恐怖を感じているかもしれません。
しかしよくよく考えてみると、人間は生まれた時から何も持っていないのだから、死んで失うものなんて本当は何も無いのだと言っているのです。
続くBメロ部分の歌詞。
それじゃ それじゃ またね
少年の瞳は汚れ
5時の鐘は鳴り響けど もう聞こえない
それじゃ それじゃ まるで
全部 終わったみたいだね
大間違い 先は長い 忘れないから
「それじゃまたね」と、主人公はこれから死後の世界へと向かっていきます。
人はいつかは年老いて死んでいく。
澄んだ瞳と心を持って生きていた少年も、いつかは少しずつ汚れていくのです。
“5時の鐘”という言葉は、少年時代の帰りのチャイムを表しているのかもしれません。
大人になるとその鐘の音を意識することもなくなりますよね。それはつまり年を取ったということなのだと思います。
そして、これから死後の世界へと向かおうとしている主人公なのですが、死ぬことが全ての終わりであるという解釈はしていないようです。
“死”はあくまで長い旅の途中のイベントにすぎないのだと。
まだまだこの先には死後の世界が続いていくのだと。
だからまだまだ君たちのことを忘れることは無いよと、生の世界に生きる人たちへ伝えているのかもしれません。
そしてサビの歌詞がこちら。
まずは前半部分から。
ああ 全て忘れて帰ろう
ああ 全て流して帰ろう
あの傷は疼けど この渇き癒えねど
もうどうでもいいの 吹き飛ばそう
ここでは主人公の願望が歌われているようです。
死ぬときは、生きていた時のネガティブな感情を綺麗忘れていきたい。清々しく安らかに死んでいきたい。そんな意味が込められているのだと思います。
そして最後の”もうどうでもいいの”というフレーズによって、その願望がより一層強く表現されているのです。
そしてサビ後半部分の歌詞。
さわやかな風と帰ろう
やさしく降る雨と帰ろう
憎みあいの果てに何が生まれるの
わたし、わたしが先に 忘れよう
“さわやかな風”や”やさしく降る雨”という言葉も、サビ前半部分と同様に清々しさを表現しているのだと思います。清々しく最期は自然(無)に帰って死んでいこうと歌うのです。
そして続く”憎しみ合いの果てに何が生まれるの”という問いかけ。
生きていた頃に”傷”や”渇き”といったものを生み出したものが、まさに憎しみ合いの感情だったのかもしれません。
憎しみ合うことによって生まれるのはネガティブな感情だけであり、そんなぶつかり合いが無くなることを望んでいるのだと思います。
しかし人が生きている限り、憎しみの感情が完全に無くなることはないということにも気づいているのでしょう。
だからこそ主人公は自らの死をきっかけに、私の方からその憎しみの感情を放棄するよと言っているのです。そうすることで世界が少し優しくなるはずだからと、愛に溢れたメッセージが歌われます。
1番の歌詞では主人公の望む世界、理想の世界が表現されていましたが、2番では「そうは言っても人間そんな単純じゃないよね」という内容が描かれているようです。
2番:歌詞の意味
まずは冒頭Aメロ部分の歌詞。
あなたは弱音を吐いて
わたしは未練こぼして
最後くらい 神様でいさせて
だって これじゃ人間だ
わたしのいない世界を
上から眺めていても
何一つ 変わらず回るから
少し背中が軽くなった
冒頭から”弱音を吐いて”や”未練こぼして”といった、少しネガティブな言葉が並びます。
これらは、人間の”弱さ”の部分を表しているようです。
そしてここで出てくる”神様”という言葉は、頭では分かっているはずの理想の姿を表現した言葉なのかもしれません。
1番の歌詞に出てきたような、人間は生まれた時から何も持っていなかったのだから、死んで失うものなんてないんだという考え方を象徴しているように思えます。
自分がこの世界からいなくなったときのことを冷静に考えてみると、何一つ変わることなく時間が進んでいく気がする。
しかし、どこか神様のように達観することができない主人公(人間)がいるのです。
そんな心の葛藤が描かれていきます。
続くBメロ部分の歌詞。
それじゃ それじゃ またね
国道沿い前で別れ
続く町の喧騒 後目に一人行く
ください ください ばっかで
何も あげられなかったね
生きてきた 意味なんか 分からないまま
「それじゃまたね」と、主人公はこれから死後の世界へと向かっていきます。
人はいつかは年老いて死んでいく。
そしてその時人生を振り返ると、沢山の後悔が溢れ出てくるのです。
結局人は生きている間、気づけば誰かから何かを”貰う”ことばかりを考えてしまうもの。
頭では”与える”ことの大切さを理解していたはずなのに、中々それを行動に移すことはできなかった自分自身を惨めに思っているのかもしれません。
これまでも何度も自分の存在意義について考えてきたはずなのに、主人公はその意味に辿り着く前にこの世から去ってしまうのです。
そして2番サビの歌詞がこちら。
まずは前半部分から。
ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう
与えられるものこそ 与えられたもの
ありがとう、って胸をはろう
これまで”与える”という行為を中々できずに生きてきた主人公は、最期くらいは”与える”ということをしてから死んでいきたいと思うようになります。
自分が何も持たずにこの世に生まれて来たというならば、今自分が与えられるものは全て、周りの誰かから受け取ってきたものだから。
自分という人間に何もかもを与えてくれた全ての人、モノに感謝をしたいと思うのです。
そしてそれらをこの世に置いていくことで、命の火が受け継がれ、人はまっさらな気持ちで安らかに死後の世界へと向かうことができるのかもしれません。
そして後半部分の歌詞。
待ってるからさ、もう帰ろう
幸せ絶えぬ場所、帰ろう
去り際の時に 何が持っていけるの
一つ一つ 荷物 手放そう
憎み合いの果てに何が生まれるの
私、私が先に 忘れよう
人は死後の世界に何か持っていけるものはあるのだろうか?
その答えはNo.
何一つとして死後の世界へは持っていくことができません。
そして、死んでしまってからその事実に気づくのでは遅いのです。もっと早く気が付き、生きている間に少しずつ自分が受け取ってきたモノを手放していく準備をする。
そうすることで人は、死に際に後悔することなく、安らかに眠ることができるのだと言っているのだと思います。
そしてラストはこの歌詞。
あぁ今日からどう生きてこう
この言葉は、これから死後の世界へと向かう主人公と、これからも現世で生き続けていく人たちそれぞれが発した言葉のような気がします。
現世に全てを置いて、何もかもを手放し新しい心持ちで門出に立つ主人公。それは1度無に帰った後に、死後の世界でまた新たな生活が始まるということなのかもしれません。
また違う世界で次はどんな人生を送っていこうかと、悩める日々はいつまでも続くのです。
そして残された人たちもまた、これからどうやって生きていこうかと悩みます。
人の死に触れるタイミングというのは、
ある意味で自分の人生を見つめ直すきっかけにもなるのです。
幸せな最期を迎えるには、今どうやって生きるのが正解なのだろうかと。
悩みもがきながらも必死に生き抜いていこうとする人たちが、この世界には沢山いるのだということを伝えているのだと思います。
『死』というものを考えることこそに、『幸せ』のヒントが隠れているのかもしれません。
なんとも儚く優しい一曲。
頭の中では理解できている真実と、それと相反する人間臭い現実。その二つの世界が『死』というテーマを通じて美しく描かれていました。
ぜひ一つ一つの歌詞の意味を楽しみながらじっくりと『帰ろう』を聴いてみて下さい!
風くんの新しい一面に出会えるかもしれません。
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