Mrs. GREEN APPLE（ミセス）『ナハトムジーク』の歌詞とその意味について考察していきます。
この曲は、映画『サイレントラブ』の主題歌として書き下ろされた楽曲で、不器用に生きる私たちの、矛盾や葛藤を描いた楽曲になります。
夜の静寂の中で、愛されたいと願いながらも間違いを繰り返す姿が綴られるのです。
本記事では、歌詞に込められたメッセージをフレーズごとに丁寧に読み解き、楽曲全体を通じて伝わる深い意味を探っていくので、ぜひ最後までご覧ください！
あくまで筆者自身が解釈したものになるので、一つの参考として受け取っていただけると幸いです。
Mrs. GREEN APPLE『ナハトムジーク』歌詞
歌手：Mrs. GREEN APPLE
作詞：大森元貴
作曲：大森元貴
収録：デジタルシングル『ナハトムジーク』
発売日：2024年1月17日（水）
胸の痛み
喉を伝い
聲にならない夜の帷
優しくいたい
素直でも在りたいのに
僕らはヘタクソに生きてる
駄目でもいい？
弱くていい？
教えてよ
抱きしめる
幾通り いつも通り 強く酷く
触れ合えばわかるから
愛されたいのに いつも通り
間違いばかりの今日をまず愛そうか
あゝ理想だ
狂おしく頬を擦り寄せて歌を唄う
暗闇の中の光が傷跡に染みるが矛盾こそ生き抜く為の美だ
抱きしめてあげてね
虚ろな日々でも
乱した呼吸を整えて ほら
「愛されたい」は報われるかな？
手を取り 微弱な風に揺られて
無茶苦茶なこの世界を愛そうか
塵みたいなもんでしょう
勝手に積んできたんでしょう？
いつの日か崩れても
誰のせいでもないよ
歩くのが疲れたの？
むしろ正常でしょう？
全て無駄に思えても
君は正しいんだよ「研ぎ澄まして」
抱きしめる
幾通り いつも通り 強く柔く
確かなものじゃ無いから
触れ合えど 釦はズレていきますが
愛したい
最期まで信じたい見事さ
また間違えて 履き違えてく不器用な
愛しいボンクラ
等しい僕ら。
『ナハトムジーク』歌詞の意味＆楽曲背景
この曲『ナハトムジーク』は、「夜」という時間の中で人間の本質に向き合い、不器用な愛や生き方を肯定するためのメッセージが込められた楽曲になります。
夜というのは、孤独や葛藤、願望が浮かび上がりやすい時間帯ですが、そんな夜に、自分の弱さや矛盾を受け入れながらも、それでも前に進もうとする姿が描かれているようです。
端的に表すならば、「不完全な僕らがそれでも愛を求め、生きる意味を探しながら進むことの美しさ」が表現された一曲でしょうか。
大森くんらしい歌詞が十分に感じられる作品となっていますので、ぜひ最後まで読み進めていただけると嬉しいです。
公式MVの紹介
YouTubeにて公開されている公式MVがこちら。
ここからはフレーズごとに歌詞考察をしていきます。
1番：歌詞の意味
まずは冒頭1Aメロの歌詞。
胸の痛み
喉を伝い
聲にならない夜の帷
優しくいたい
素直でも在りたいのに
ここで描かれているのは、自分の中に溜まった感情が、喉まで込み上げるのに言葉にならない、そんなもどかしさ。
痛みや苦しみはあるのに、それをうまく表現できない。叫びたくても、声が出ない。誰かに伝えたいのに、言葉が見つからない。そんな無力感と閉塞感が、夜の静寂の中で一層強く感じられます。
「声にならない」というのは、単に音として発せられないのではなく、自分の心の中ですら整理できない感情の渦を象徴しているのではないでしょうか。
そして「夜の帷（とばり）」とは、夜の闇や静けさを指す言葉。夜は心が落ち着く時間であると同時に、孤独や本音が浮かび上がる時間でもあります。
そんな中で「優しくいたい」「素直でありたい」と願うのは、自分が本来持っている純粋な気持ちや理想を叶えたいという思い。ただ、それがなぜか叶わない。
優しくしたいのに、どこかで傷つけてしまったり、素直になりたいのに、不器用に強がってしまったり。理想と現実のギャップが、自分自身を苦しめているのだということが、ひしひしと伝わってきました。
続く1番Bメロの歌詞。
僕らはヘタクソに生きてる
駄目でもいい？
弱くていい？
教えてよ
このパートは、楽曲の核となるテーマが歌われます。
「ヘタクソに生きてる」という表現は、不器用で思い通りに生きられないことへの自覚を示しているのだと思います。人生において失敗を繰り返し、迷いながら生きていることを認めているのではないでしょうか。
ただ、僕らは、人生を完璧に生きることなんてできないし、むしろ「ヘタクソに生きる」のが当たり前なんだというメッセージも感じれます。それでも、なんとか今日を乗り越えていくのだと。
人生に正解などはなく、誰かのお手本通りに生きられるわけでもありません。だからこそ、不器用なままでいいのだという、大森くんからのメッセージのように捉えられそうです。
続く部分で「駄目でもいい？」「弱くていい？」と自問しているのは、自分の弱さや不完全さを肯定できずにいることも事実だからだと思います。
自分の弱さを認めたいけど、それを受け入れる勇気がまだ足りていない。だからこそ、誰かに「駄目でもいいよ」「弱くてもいいよ」と言ってほしいのではないでしょうか。
しかし、それを他人に求めることすらもどかしく、自分で自分に問いかける。
この「教えてよ」は、誰かに問いかけているようで、実は自分自身に対する問いでもあるのだと思います。生きることに対する迷いや、不安定な心の状態が伝わってきます。
そして1番サビの歌詞。
抱きしめる
幾通り いつも通り 強く酷く
触れ合えばわかるから
愛されたいのに いつも通り
間違いばかりの今日をまず愛そうか
あゝ理想だ
「抱きしめる」という行為は、愛を確認するための最もシンプルで強い表現。
そして「幾通り」というのは、愛の形にはさまざまなパターンがあり、絶対的な正解がないことを示しているのだと思います。
さらに続く「いつも通り」という言葉には、どんなに混乱していても日常は流れ続けていく、という大森くんなりの皮肉も含まれているような気がしました。
そう捉えると、「強く酷く」と続くことにも納得がいきそうです。
愛には優しさだけでなく、時に苦しみや痛みも伴うことを表しており、愛することは時に暴力的なほどに強く、時に優しさの裏で傷つくこともある、ということではないでしょうか。
そして人は、言葉を尽くしても誤解することもあります。
ただ、触れ合えば、言葉以上に伝わる”こと”があるのです。言葉で伝えるよりも、ただ寄り添い、触れ合うことの大切さを表しているように感じました。
後半部分の「愛されたい」というのは、人間の根本的な願望。しかし、それが叶わずに空回りしてしまうことも多いと思います。
だからこそ、「間違いばかりの今日」も、まずは受け入れてみよう。完璧ではない自分、失敗してばかりの自分を、まずは自分で愛してみようという提案をしてくれているのです。
2番：歌詞の意味
2番Aメロの歌詞。
狂おしく頬を擦り寄せて歌を唄う
暗闇の中の光が傷跡に染みるが
このパートでは、ただの「愛」ではなく、「狂おしく」という言葉が使われています。
ここでの「狂おしさ」とは、感情があまりにも大きくなりすぎて、自分ではコントロールできない状態を指しているのではないでしょうか。
ただ「愛している」と思うだけでは足りない。相手の存在を確かめたくて、触れたくて、どうしようもなく求めてしまう。そんな衝動的な感情が「頬を擦り寄せて」という表現に込められているのだと感じました。
続く、「歌を唄う」という言葉ですが、これは音楽のことではなく、「自分の心の中にある感情をどうにかして表現すること」を意味しているのだと思います。
言葉にできない感情を旋律に乗せて吐き出すことで、自分自身を救おうとしている。誰かのために歌うのではなく、自分が生きるために歌っている、そんな切実な想いが感じられました。
そして、ここで歌われる「暗闇」とは、自分の孤独や迷い、過去のトラウマを象徴しているのではないでしょうか。
その中に現れる「光」は、希望や救済のようなものだと思いますが、その希望は単に「暖かくて優しいもの」ではなく、過去の痛みを刺激するような、チクチクとした痛みを伴う希望なのだということです。
例えば、過去に誰かを失った人にとって、新しい出会いは希望でありながらも、かつての喪失を思い出させるものでもあります。「幸せ」や「光」が、「傷」の存在を際立たせてしまうことがあるのではないでしょうか。
つまり、この部分では「新たな希望が必ずしも無条件の救いになるわけではない」ということが描かれているのだと感じました。
それでも、その光に手を伸ばすかどうか。
それがこの楽曲のひとつのテーマなのだと思います。
続く2番Bメロの歌詞。
矛盾こそ生き抜く為の美だ
この一節は、『ナハトムジーク』の中でも特に強いメッセージ性を持った言葉。
「矛盾」というのは、この曲全体を通じて繰り返し現れるテーマでもあります。
1番では「愛されたいのに、愛し方がわからない」「間違いばかりの今日を愛そう」というように、人生の中で生じる矛盾をどう受け入れるかが語られていました。そして2番では、その矛盾そのものが「生き抜くための美しさ」なのだ、と結論付けています。
「矛盾」がなぜ「美」なのでしょうか？
それは、「何も矛盾しない世界」は、逆に言えば「何の成長もない世界」だからだと思います。人は常に、自分の理想と現実のギャップに苦しみ、悩みながら成長していくもの。
愛したいのに傷つけてしまう、信じたいのに疑ってしまう、前を向きたいのに過去に囚われてしまう。そんな矛盾を抱えながらも、僕たちは生きていくしかないのです。
だからこそ、「矛盾を抱えながら生きること自体が、美しいことなんだ」と、ここでは語っているのではないでしょうか。
この言葉は、「どうしてうまく生きられないんだろう」と悩む人への、ひとつの救いになっているのかもしれません。「その矛盾こそが、生きている証拠なんだよ」と。
そして2番サビの歌詞。
抱きしめてあげてね
虚ろな日々でも
乱した呼吸を整えて ほら
「愛されたい」は報われるかな？
手を取り 微弱な風に揺られて
無茶苦茶なこの世界を愛そうか
ここで歌われる「抱きしめる」という言葉は、1番のサビでも登場しました。
しかし、1番では「抱きしめること」で相手とのつながりを確認するという意味合いが強かったのに対し、2番では「抱きしめてあげてね」と、少し視点が変わっています。
ここでの「抱きしめてあげてね」は、単なる恋人や他人ではなく、自分自身のことを指しているように思えました。
「虚ろな日々でも」と続くことから、何をしても心が満たされない日々、自分の存在意義が見えなくなるような日々でも、自分自身を抱きしめてあげることが大切だ、と言っているのではないでしょうか。
1番Bメロで「駄目でもいい？弱くていい？」と問いかけていたときの不安定な心情に比べると、ここでは「乱れた呼吸を整える」という、より冷静な視点が加わっています。
人生において、不安や迷いは避けられませんが、まずは一度深呼吸して、落ち着いてみよう。そうすれば、少しずつでも前に進めるからと。そんなメッセージが込められているのではないでしょうか。
続く「愛されたいは報われるかな？」という言葉は、1番サビで歌われた「愛されたいのに」という言葉と対応しています。
1番では「愛されたい」と願うだけでしたが、2番では「それが報われるのか？」と、自分の願いが叶う可能性を探し始めています。この言葉には、「ただ願うだけではダメなのかもしれない」という気づきも含まれているように思います。
そして最後の一節も、1番の「間違いばかりの今日をまず愛そうか」という言葉から、「無茶苦茶なこの世界を愛そうか」に変わっています。
1番では「今日」、つまり個人的な視点での間違いや失敗を受け入れようとしていました。しかし2番では、「この世界」にまで視点が広がっています。
矛盾や理不尽に満ちた世界そのものを、それでも愛せるだろうか？
そんな問いが、ここには込められているのだと思います。
その後Cメロの歌詞が続きます。
まずは前半部分。
塵みたいなもんでしょう
勝手に積んできたんでしょう？
いつの日か崩れても
誰のせいでもないよ
ここで登場する「塵」という言葉は、これまでの人生で積み重ねてきたものすべてを指しているのだと思います。
経験、思い出、後悔、努力、失敗など、それらすべてを一言で「塵」と表現しているのが、なんとも冷静で、そして少し自嘲的な響きを持っていて、まさに大森節。
ただ、「塵みたいなもんでしょう」という言葉には、自分自身を軽視しているようなニュアンスもありながら、「塵のようなものかもしれないけれど、それでも確かに積み重ねてきたんだ」という認識も含まれているように感じます。
「勝手に積んできたんでしょう？」という言葉は、自分自身に向けたものでもあり、同時にリスナーにも語りかけているように思えました。
人は生きていく中で、意識的にしろ無意識的にしろ、たくさんのものを積み上げていく。しかし、それが本当に価値のあるものなのかどうかはわかりません。
もしかすると、いつか一瞬で崩れてしまうかもしれない。
そんな不確実性を認めることで、逆に「じゃあ、それでもどう生きる？」という問いが生まれているのです。
「いつの日か崩れても」という言葉がまさに、自分が積み上げてきたものが、ある日突然失われてしまうかもしれないという可能性のこと。
努力や築いてきた関係、成功、名声など、すべてがある日崩れてしまうことがあるのです。
それは個人的な失敗によるものかもしれないし、社会や環境の変化によるものかもしれません。ただ、それが「誰のせいでもない」と語られることで、何かを失ったときの自己否定や誰かを責めることの無意味さを、訴えかけているのではないでしょうか。
ここで大森くんが伝えようとしたのは、「全てを失ったとしても、それは必然だったのかもしれないし、だからこそそこからまた何かを得ることもできる」という視点だと思います。
「崩れること」を怖がるのではなく、むしろ受け入れようと。
そんなニュアンスが込められているように思えました。
そしてCメロ後半の歌詞。
歩くのが疲れたの？
むしろ正常でしょう？
全て無駄に思えても
君は正しいんだよ「研ぎ澄まして」
このパートの言葉は、一見シンプルな問いかけのように見えますが、実はとても大きな意味を持っているのではないでしょうか。
「歩くのが疲れる」とは、文字通りの意味ではなく、「生きることに疲れた」という比喩だと思います。
そして、それに対する答えが「むしろ正常でしょう？」というフレーズ。
生きることに疲れるのは、何も特別なことではなく、むしろ当たり前のことなんだよ、と優しく肯定してくれているのではないでしょうか。「頑張れ」と無理に背中を押すのではなく、「疲れるのは正常だよ」と言ってくれることが、どれだけ救いになるか。
この言葉には、リスナーを優しく包み込むような温かさが感じられます。
そして続く歌詞で「全て無駄に思えても」という言葉が登場します。
どれだけ努力しても、どれだけ考えても、「自分がやってきたことに意味はあったのか？」と疑問に思うことがある。ただ、そう思ってしまうことさえも含めて、間違いではないのだ、と伝えてくれるのです。
「君は正しいんだよ」という一言は、この曲の中でも特に優しく、力強いフレーズですよね。
「何が正しいのか」なんて誰にもわかりません。しかし、自分なりに悩み、苦しみ、考え抜いたそのプロセスこそが「正しさ」なのだということだと思います。
最後の「研ぎ澄ます」というフレーズは、鈍ったものを削ぎ落として、本質を見つめるということ。自分の中にある雑音や余計な不安を一度手放し、本当に大切なものを見極めること。
ここでは、「生きるために、愛するために、自分の心を研ぎ澄ませ」と言っているようにも感じられます。迷い続けながらも、自分自身を見失わないために。
最後はラスサビのこの歌詞で終わります。
抱きしめる
幾通り いつも通り 強く柔く
確かなものじゃ無いから
触れ合えど 釦はズレていきますが
愛したい
最期まで信じたい見事さ
また間違えて 履き違えてく不器用な
愛しいボンクラ
等しい僕ら。
1番のサビで「強く酷く」と歌われたフレーズが、ここでは「強く柔く」に変化しています。これは、愛の形がより穏やかに、包み込むようなものへと変わったことを示しているのではないでしょうか。
1番では「強く抱きしめることで愛を確かめる」というニュアンスが強かったのに対し、ラスサビでは「優しさをもって愛する」ことへと視点が移っています。
「確かなものじゃ無いから」という一節は、愛も人生も、何一つ確実なものではないという真理を表しているのだと感じました。
人は「絶対に変わらないもの」を求めがちですが、実際にはすべてが変化していきます。
「触れ合えど、釦はズレていく」という表現は、どんなに愛し合っていても、どんなに触れ合っていても、少しずつズレていってしまうという現実を示しているのです。
しかし、それでもなお、「愛したい」「信じたい」と願うことが、人間の美しさなのではないでしょうか。
人は何度でも間違える。何度でも同じ過ちを繰り返す。
それでも、その現実を受け入れて生きていくしかないのです。
間違いながらも、それを含めて「見事さ」と肯定するこの一節には、不完全なままで生きていくことの美しさが表現されているのだと思います。
そして、最後に「ボンクラ」という言葉が登場することで、曲全体が「不完全な僕らを肯定する」というメッセージで締めくくられるのです。
不器用でも、矛盾していても、それでも「愛しい」存在であること。
完璧じゃなくても、間違いだらけでも「等しい」存在であること。
そんな、不完全なままで愛し合うことを肯定する、この曲の最も重要なテーマがここに集約されています。
ぜひ歌詞の意味にも注目しながら、この曲『ナハトムジーク』を聴いてみて下さい！
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