Mrs. GREEN APPLE（ミセス）『Doodle』の歌詞とその意味について考察していきます。
この曲は、花王『メリット』「夢中の汗」篇のCMソングとしても起用された一曲。
派手さや完璧さではなく、日々の”水やり”や”月並みな幸せ”を大切にしながら、それでも自分だけの線を描き続けて良いのだと、背中を押してくれる楽曲です。
本記事では、歌詞に込められたメッセージをフレーズごとに丁寧に読み解き、楽曲全体を通じて伝わる深い意味を探っていくので、ぜひ最後までご覧ください！
あくまで筆者自身が解釈したものになるので、一つの参考として受け取っていただけると幸いです。
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Mrs. GREEN APPLE『Doodle』歌詞
歌手：Mrs. GREEN APPLE
作詞：大森元貴
作曲：大森元貴
収録：5thオリジナル・フルアルバム『ANTENNA』
発売日：2023年7月5日（水）
気にしないスタイルで it’s okay
所詮尺繋ぎだろ 学びの舎
でも少し大人になってみて思うんだ
気にし過ぎ every day も大切で
多感潤す水飲み場
避けて生きれても結局は
ぶち当たるんです
夢なら覚めてと
思う日もあるだろう
枯れない様に育ててゆくんだ
水をやり歩いてゆくんだ
良いも 悪いも
この時代を生きて居るんだ
空に描いた希望の地図も
今もしっかりと持って居るよ
大事にね
形あるもの孰れ消え去って
殻になり何処かでまた咲いて
悲しみが繰り返されるのは
もう存じてます
疲れてる自覚はありますか？
生きにくさはいつか慣れますか？
誰かが救われる今日なら本当にいいのにな
｢うるさい！｣ お前らが言う程
捨てたもんじゃないから
喜びを武器に楯突くんだ
負けるな！今日も気張ってゆくんだ
君には絶対 報われる価値があるんだ
古来から繋ぐ想いを
今もしっかりと紡いで居れてるのかな？
間違いなく、ね
パブロフの犬、僕らもそう
(Ah-ohh-ohh) 君と僕の愛はどう？
(Ah-ohh-ohh) アダムとイブ、僕らもそう
(Ah-ohh-ohh) よく出来てる。人もそう
枯れない様に育ててゆくんだ
水をやり歩いてゆくんだ
良いも 悪いも
この時代に生きて居るんだ
空に描いた希望の地図も
今もしっかりと持って居るよ
大事にしてるけど
夢を見る度現実を知るんだ
誰かにゃ到底なれやしないな
自分だけが持つ
種を忘れるけど
月並みな幸せを抱いて逝くんだ
それがやっぱり良いな
最高だよな
終わりまでは
生きてみようかな
大事にね
『Doodle』歌詞の意味＆楽曲背景
タイトルの『Doodle』とは”落書き”を意味する言葉になります。
落書きのような軽やかさで、生きづらさと小さな幸福を同時に抱きしめる。「自分のペースで、でも手を止めずに育てよう」という実用的な優しさを届けてくれます。
気にしないことも、気にすることも、どちらも生の一部。私たちはときに条件づけられた存在だけれども、だからこそ”喜び”を選び取り、互いの種を枯らさないよう水をやる。
水・種・地図といった比喩を通して、私たちの日常をもう一度ていねいに描き直してくれるような楽曲です。
公式音源の紹介
公開されている公式音源がこちら。
ここからはフレーズごとに歌詞考察をしていきます。
1番：歌詞の意味
1番Aメロの歌詞。
気にしないスタイルで it’s okay
所詮尺繋ぎだろ 学びの舎
でも少し大人になってみて思うんだ
冒頭の〈気にしないスタイルで it’s okay〉は、ゆるい英語を使った軽やかな始まり。この一文は、聴く人の気持ちをふっと楽にしてくれる”余白”のような役割を果たしています。
そのあとに出てくる〈所詮尺繋ぎだろ 学びの舎〉では、「学校生活なんて、本番（社会や人生）のためのつなぎにすぎない」とする、若さゆえの冷めた見方＝ニヒリズムが現れているように感じます。
しかし、すぐに〈でも少し大人になってみて思うんだ〉という言葉が続き、その軽視を自分自身で見直そうとしている。
ここでのポイントは、「最初に軽口をたたいておきながら、自分ですぐにそれを回収している」ということです。この”ひとまず言ってみる→すぐ考え直す”という往復の流れが、単なる反省ではなく、柔らかく線を引き直すまさに”Doodle（落書き）”的な発想に繋がっているように感じました。
こうして、軽口と内省がスピード感をもって交差する構造が、大森くんの言葉に対する”信頼感”を支えているのではないでしょうか。自分を一方的に正すのではなく、常に更新し続ける姿勢が見えてきます。
続く1番A’メロ・Bメロの歌詞。
気にし過ぎ every day も大切で
多感潤す水飲み場
避けて生きれても結局は
ぶち当たるんです
夢なら覚めてと
思う日もあるだろう
〈気にし過ぎ every day も大切で〉というフレーズでは、Aメロでの「気にしない方がいい」という流れを反転し、「気にしてしまうこと」も大切だと肯定してくれます。大森くんはここで、「どちらか一方だけではなく、その間を行き来すること」を受け入れるスタンスを明確にしているのではないでしょうか。
続く〈多感潤す水飲み場〉は、「学校の水飲み場」という身近なイメージを使って、「思春期の繊細な感情が潤される場所」として描かれているように感じました。抽象的な”多感”という言葉を、物理的な場面に変換する比喩がなんとも秀逸だなと。
そして〈避けて生きれても結局は ぶち当たるんです〉というフレーズでは、「問題を避けて通ることはできても、どこかで必ず向き合うことになる」という現実を、あえてカジュアルな言い回しで伝えています。
〈夢なら覚めてと思う日もあるだろう〉でも、いつかは困難にぶつかるだろうということと、その辛さが表現されていますが、その現実を否定せず、そっと受け入れています。
ここで大切なのは、この歌は”希望”を手放さないことです。その希望は、まっすぐに掲げるものではなく、ゆらゆらと揺れ続けるもの。だからこそ、「水＝希望を保つために必要なもの」がこのあと登場するサビに自然につながっていくのだと感じました。
そして1番サビの歌詞。
枯れない様に育ててゆくんだ
水をやり歩いてゆくんだ
良いも 悪いも
この時代を生きて居るんだ
空に描いた希望の地図も
今もしっかりと持って居るよ
大事にね
〈枯れない様に育ててゆくんだ／水をやり歩いてゆくんだ〉というフレーズでは、”私”が主体ですが、語りの視点は「植物を育てる私」とも「誰かに育てられる私」とも受け取れます。この曖昧さが、サビの中心にある「自分と世界が互いに支え合う関係」を浮かび上がらせているのではないでしょうか。
また〈良いも 悪いも この時代を生きて居るんだ〉という言い切りは、「善い」「悪い」といった価値判断を超えて、「今という時代を生きている」という共通の実感を強調しています。
そして〈空に描いた希望の地図〉という歌詞は、タイトル”Doodle（落書き）”のイメージを広げています。空を白いキャンバスのように見立てて、まだ完成していない「希望の地図」を描いていく。この曲は、完成や結果を求めるのではなく、「続けていくこと」や「維持していくこと」に価値を置いているのだと思います。
最後の〈大事にね〉という言葉も命令ではなく、聴く人と共有するやさしい合図のように響きます。それは「面倒を見る義務」ではなく、「見守るような気配」を聴き手にそっと残してくれているのかもしれません。
このパートではもう一つ「生きて居る」「持って居る」といった、”居”を使った古めかしい表記が印象的だなと感じました。
この”居”には、「生きている＝ただ存在している」というよりも、「今ここにとどまっている」というニュアンスがあります。このことからも、この曲は生きることを”結果”ではなく、”過程”として描いているのだという宣言が伝わってきます。
2番：歌詞の意味
2番Aメロの歌詞。
形あるもの孰れ消え去って
殻になり何処かでまた咲いて
悲しみが繰り返されるのは
もう存じてます
〈形あるもの孰れ消え去って〉という歌詞は、「すべてのものはいつか消える」という”無常観”を示しています。続く〈殻になり何処かでまた咲いて〉では、「殻」と「咲く」という言葉を使い、痛みを経験したあとの再生のイメージが描かれているのではないでしょうか。
傷ついた記憶は”殻”として自分の外に残り、それが別の場所やタイミングで”花”として新たな形に変わる、という二重の比喩が込められているのだと思います。
〈悲しみが繰り返されるのは もう存じてます〉というフレーズでは、「存じてます」という敬語が使われていることが印象的です。この丁寧な表現が、「人生で何度も悲しみを経験してきた」という静かな重みを感じさせながら、聴き手に対して上から目線にならず、やさしく語りかけるような落ち着きを生み出している。
ポップスの歌詞ではあまり見られない語り口が、説得力のある大人のまなざしを伝えているように感じました。
2番A’メロの歌詞。
疲れてる自覚はありますか？
生きにくさはいつか慣れますか？
誰かが救われる今日なら本当にいいのにな
〈疲れてる自覚はありますか？〉〈生きにくさはいつか慣れますか？〉という歌詞では、メンタルヘルスについてストレートに問いかけています。ただし、その問い方はやさしく、押しつけがましくはありません。そして〈誰かが救われる今日なら本当にいいのにな〉というフレーズで、視点が”自分”から”他者”へと広がります。
ここで重要なのは、「自分を大切にすること」と「誰かを救いたいと思うこと」がつながっているという点です。このつながりが、次のサビにおける「喜び」をめぐる前向きな気持ちや、それを守ろうとする姿勢へと自然に橋渡しされています。
ちなみにこのパートでは問いかけの優しさを感じることもできました。
ここで歌われた問いは、YesかNoかで簡単に答えられない”開かれた問い”です。そのため、「正しい答え」を求めているのではなく、聴き手が自分のペースで考えたり向き合ったりする時間を尊重してくれています。
これはまさに「ケアする問い方」だと思いますし、ミセスらしい歌を通じたやさしいコミュニケーションのかたちなのではないかと感じました。
2番Bメロの歌詞。
｢うるさい！｣ お前らが言う程
捨てたもんじゃないから
〈「うるさい！」 お前らが言う程 捨てたもんじゃないから〉というフレーズは、世間からの決めつけやラベルを、そのまま”引用”することで逆に力を抜き、反論ではなく、軽やかな”自己肯定”として表現しています。
怒って否定するのではなく、「いや、そんなに悪くないよ」と自然に言い返すような語り口に感じました。
続く2番サビの歌詞。
喜びを武器に楯突くんだ
負けるな！今日も気張ってゆくんだ
君には絶対 報われる価値があるんだ
古来から繋ぐ想いを
今もしっかりと紡いで居れてるのかな？
間違いなく、ね
そして決定的なのが〈喜びを武器に楯突くんだ〉というフレーズ。ここで武器にするのは怒りや皮肉ではなく、「喜び」。つまり、自分が感じたポジティブな感情をエネルギーにして、自分らしく立ち向かっていこうという、やさしくも芯のある姿勢が示されています。
その後の〈負けるな！ 今日も気張ってゆくんだ〉という言葉で、話は日常へと戻されます。ここでは「がんばれ」ではなく、「今日も」と日々の時間に寄り添う表現がされているのがポイントではないでしょうか。
そして〈君には絶対 報われる価値があるんだ〉では、「結果が出るから価値がある」のではなく、「今の君自身がすでに価値のある存在なんだ」と伝えてくれるのです。
続く〈古来から繋ぐ想いを 今もしっかりと紡いで居れてるのかな？〉では、時間のスケールが一気に広がり、「自分の思い」が歴史の中に連なっている感覚が描かれます。ここで大切なのは、「自分はちっぽけ」と嘆くのではなく、「長い歴史の流れの中にちゃんとつながっている」という責任と安心を同時に感じさせてくれる点ではないでしょうか。
最後の〈間違いなく、ね〉という一言には、「強い断言」と「受け手に寄り添うやさしさ」の両方があります。「ね」と語りかけることで、聴く人がそれぞれの気持ちで受け止められる余白が生まれているのです。
Cメロの歌詞が続きます。
パブロフの犬、僕らもそう
(Ah-ohh-ohh) 君と僕の愛はどう？
(Ah-ohh-ohh) アダムとイブ、僕らもそう
(Ah-ohh-ohh) よく出来てる。人もそう
〈パブロフの犬、僕らもそう〉とは、「人も条件づけられて行動する存在だ」ということを素直に認めている、ということではないでしょうか。しかし、そのすぐあとに〈君と僕の愛はどう？〉と問いかけ、そうした前提の上でもなお、「自由な愛」は可能かどうかを探ろうとしているのだと思いました。
〈アダムとイブ、僕らもそう〉では、人間の始まりを象徴する神話を引用し、「私たちは昔から変わらない存在かもしれない」という視点を持ち込んでいます。そして〈よく出来てる。人もそう〉という一言には、人間の構造や習性への皮肉が込められているように感じました。
「人は賢くできているけど、習慣に縛られたり、神話的な物語に支配されやすい」。そんな矛盾を抱えながら生きる人間を、そのまま受け入れているのではないでしょうか。
ここでは、視点が「個人（僕）」から「人類全体」へとぐっと広がり、まるでカメラがズームアウトするような感覚になります。そしてそのあとのサビでは、また一気に”いま・ここ”の個人的な感情へと戻ってくる。まさにこのパートは、歌全体の中で視点をつなぐ「橋（ブリッジ）」のような役割をCメロとして担っているのだと思います。
3番：歌詞の意味
3番サビの歌詞。
枯れない様に育ててゆくんだ
水をやり歩いてゆくんだ
良いも 悪いも
この時代に生きて居るんだ
空に描いた希望の地図も
今もしっかりと持って居るよ
大事にしてるけど
1番で登場した”水”や”地図”というモチーフが、ここでもう一度現れます。ただし今回は〈大事にしてるけど〉という留保つき。これは、「理想を大切にはしているけれど、それにとらわれすぎないようにしている」というニュアンスではないでしょうか。
この”ゆるやかな理想とのつきあい方”こそが、タイトルでもある”Doodle（落書き）”的な姿勢につながっているように感じます。きっちり完成させることよりも、「描き続けること」を大事にするスタイル。
希望はガチガチに”握る”ものではなく、壊れないように”持ち歩く”もの。そのくらいのやさしい距離感で、ずっとそばに置いておくイメージが伝わってきます。
続く落ちサビの歌詞。
夢を見る度現実を知るんだ
誰かにゃ到底なれやしないな
自分だけが持つ
種を忘れるけど
〈夢を見る度現実を知るんだ〉というフレーズでは、夢を見ては現実に戻るという”行き来”の感覚が描かれています。これは、理想と現実のあいだを揺れながら、それでも前に進もうとする私たちの日常そのものではないでしょうか。
〈誰かにゃ到底なれやしないな〉という言葉からは、「誰かみたいになろうとしても、結局自分は自分だ」と模倣の限界を受け入れる素直さがにじみます。そして〈自分だけが持つ 種を忘れるけど〉という一文では、「自分にしかない大切なもの＝種」をときには見失ってしまう、という弱さまで描かれている。
しかし、この「忘れること」も含めて、人間らしさとして受け止める寛容さが、この曲全体のやさしさの土台になっているのではないでしょうか。
そして大サビの歌詞で終わります。
月並みな幸せを抱いて逝くんだ
それがやっぱり良いな
最高だよな
終わりまでは
生きてみようかな
大事にね
〈月並みな幸せを抱いて逝くんだ〉というフレーズでは、「逝く」という言葉が使われていて、人生の終わりを静かに見つめているような感覚になります。ここでの”月並みな幸せ”は、「ありきたりでつまらないもの」ではなく、「誰にとっても共通する、かけがえのないもの」として描かれているのではないでしょうか。
そのあとに続く〈それがやっぱり良いな／最高だよな〉という口語のくり返しが、「シンプルな幸せがいちばんだよね」という気づきを、無理なく自然に高めていく流れをつくっています。堅苦しくない言葉づかいで、素直な感情がまっすぐに伝わってきました。
〈終わりまでは 生きてみようかな〉というフレーズもとても特徴的です。“生きる”という行為を、強く決意するというより、「一度やってみようかな」とやさしく選び取るような言い方にしている点が素敵だなと感じました。
それは、聴き手にプレッシャーを与えるのではなく、「一緒にやってみようよ」とそっと寄り添うような語り方になっており、それが大森くんの優しさなのだと思います。
そして最後の〈大事にね〉という一言。これは命令ではなく、相手へのお願いや願いのようなニュアンスで、歌の終わりまでやさしさが保たれています。「これからも関係を大切にしようね」という、大人びたあたたかさと距離感がおそらく込められているのです。
ぜひ歌詞の意味にも注目しながら、この曲『Doodle』を聴いてみて下さい！
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